新卒社会人1年目の日常(4)

前回→新卒社会人1年目の日常(3) - masaya1216’s diary

 

 1日目の午後が始まった。一刻も早く、部署で仲良い人を作らないと流石にこれから大変である。なんとかしなければと少し焦る。
 ここまで話を聞いていた皆さんはこう思うかもしれない。誰かと仲良くなりたいならば、自分から積極的に話しかければよいと。しかし、それはパーセントで表すと100不可能なのだ。僕は権力者に弱い。普段、周囲に睨みをきかせ見下す、カースト上位っぽい振る舞いをしている事からも分かるように権力にコンプレックスを抱いている。権力者に対しては常にヘコへコし、自分から話を振ることなど出来ない。これは余談だが、自分より下だと見抜いた瞬間から極端に横柄な態度をとるメリハリのある男でもある。
 そんな根底に眠る陰キャ根性を踏まえた上で現状を考えてほしい。僕は技術、知識、教養もないまっさらな新入社員。周りは全員が上司。圧倒的権力者ども。つまりはそういうことである。

         

 時間が経っても状況が一変することはなかった。僕は、入れてもらえない彼らの特に面白くないやりとりを、少し離れた席で聞きながら作り笑いをすることで精一杯であった。
 『でも普通こういう時って上司とかから質問したり話振ったりしてくれるもんじゃね?なんだよ、くそ。✖✖✖。』
 心の中で悪口大会がスタートした。自分の知っている全ての悪口単語を言い終わった頃だっただろうか、ついに念願のチャンスが舞い降りた。

         

 みんなから係長と呼ばれるジャニーズ系チャラ男係長が僕にこう問いかけた。

君は、タバコ吸うの?

 その場にいた上司が一斉にこちらを向く。僕の返答にみんなが耳を傾けた。悪口大会に夢中になっていたせいで、どういった流れでこの質問が僕にとんできたのか、会話の流れはさっぱり分からなかったが質問に正直に答えよう。そう思った。ハキハキと大きな声でこう言った。

いえ、僕はタバコ吸いません。

 シーン。冷え凍るオフィス。さっきまで、ガヤガヤしていた音が一切消えた。沈黙。実際には1,2秒の沈黙が僕には何時間にも感じた。額から汗が流れる。

おいおい~。そこは、吸うっていえばウケたのに~。

 2秒の沈黙を破り係長は言った。安易に答えてしまったが、どうやら僕は究極の二択を間違ったらしい。その代償はとても大きく、人生の中でもトップクラスにすべった。ボケたわけでもないのに。
 『てか、タバコ吸うっていえばウケるってどんな会話してたねん。』ふてくされる僕は、喋らない上につまらない認定された。つまらない人間に二度目のチャンスは与えられない。
 最初で最後のチャンスを逃した僕は、頭に入らない資料を7時間黙々と眺める作業で初日の業務を終えた。

 

続く(1日目最終章)→

gumondana.hatenablog.com